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Re: 山形浩生という人物について

 投稿者:大田俊寛  投稿日:2012年 4月11日(水)18時16分35秒
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  高橋英利様

書き込みを拝読しました。山形さんのブログには、昨日は私の『グノーシス主義の思想』の書評が掲載され、それに対する回答を書いていたところでした。応答が遅くなり、申し訳ございません。

山形さんに『オウムからの帰還』をお渡ししたのは、率直に申し上げて、それほど深い考えがあったからというわけではありません。高橋さんから、「大田さんが今度対談する方がいれば渡して下さい」と言われたと記憶していましたので、「そうだ、渡しておかなければ」と、私の『グノーシス主義の思想』と合わせて献本したのです。どちらに対しても書評を出して下さるとは、全然思っていませんでした。

直接お会いした山形さんは、とても紳士的で優しい方だったのですが、ご存じのように書評においては、きわめて辛辣な筆致で知られています。特に、書物の欠点と思われる箇所に対しては、殊更にそこをあげつらって一悶着起こすことがありますので(名誉毀損騒動についても知っていました)、余りそういった物言いを真に受けず、それが山形さんの「キャラ」なのだなと、ある程度受け流すことも必要だと思います。

ということで、『オウムからの帰還』に対する山形さんの書評は、私の評価とだいぶ違いますし、余りに言いすぎではないか、と率直に思います。とはいえ他方で、今回の文庫化に際しては多くの読者が、高橋さんが「文庫版へのあとがき」でどのような文章を書くのかということに注目していたのだろうな、とも思います。文庫化以前に、私は高橋さんから直接お話を伺っていましたので、「あとがき」を読んでもそれほど違和感は感じませんでした。しかし、山形さんを含め多くの読者が、サリン事件から約17年を経て高橋さんがどのように変化したのか、どのような仕方で「オウムから帰還」したのかということに注目しており、特に山形さんは、このあとがきの書き方では、「オウムから帰還」して著者がどう変化したのかということが明確には分からないではないか、ということに不満を感じたのではないかと思います。

せっかくの機会ですので、率直かつ具体的に書こうと思います。私は『オウム真理教の精神史』を公刊して以後、幸運なことに、高橋さんの他にも、野田成人さん、島田裕巳さんなど、オウム事件に関与した人々と言葉を交わす機会に恵まれました。そして、これらの方々との会話から多くを教えられたのですが、同時に、実は彼らは「オウム的思考回路」から完全には脱していないのではないか、という深い疑念が芽生えるようにもなりました。具体的に言えば、私は野田さんに対して「革命か戦争かという二元論で考えない方が良いのではないですか」と訴え、島田さんに対して「イニシエーション論は放棄した方が良いのではないですか」と訴え、高橋さんに対して「グルジェフの体系はオウムの思想に通底しているのではないですか」と訴えてきました。しかし、高橋さんを含めこれらの方々は、言葉を交わしている間は私の話を真摯に聞いてくれるのですが、どうもその後、考え方を変えてくれたという様子が見受けられないのです。すべては私の未熟さが原因なのでしょうが、昨年の年末辺りから、私が「すべて徒労なのではないか」という疲労感に苛まれるようになったのは、一つの要因としては、このような経緯があったと思います。

山形さんからの批判に対しては、山形さんの経歴や人格云々といったことを問題にしても余り意味がなく、重要なのは、そこから学び取れる点があるかないか、ということではないでしょうか。山形さんの「神様依存症」という言葉はさすがに言いすぎだ、と私は感じますが、私自身、一人の宗教学者として、神様がいるかいないかと頭のなかで考え続けることが、それ自体として「宗教的」であるとは思いません。私は基本的に、宗教が位置しているのは社会的かつ公共的な次元であると考えていますので、宗教の問題が真に問われるのは、特定の観念がどのような仕方で社会化・公共化され、多くの人々の生を支えるものとなりうるか、という次元においてであると思います。『オウム真理教の精神史』でも述べたように、宗教が個人心理の問題と捉えられたこと、公共性から隔絶された私秘的なものと捉えられたことは、近代という時代の特殊な構造が深く関わっていますので、そういった私秘的次元を「宗教」と捉え続ける限り、オウムの磁場からは完全には抜け出せないのではないか、と私は考えます。

こういう書き方で、返答になっていますでしょうか。山形さんの書評を読んで私が考えたことというのは、大枠として以上の通りです。
 
 
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