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終末論とオウムの問題

 投稿者:大田俊寛  投稿日:2011年11月22日(火)01時23分22秒
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  高橋英利様

高橋さん、ご投稿いただきありがとうございます。お会いした際にお話ししたことと重なる部分もありますが、私の考えを簡単に回答させていただきます。

まず、新約聖書の文書の選択方法については、マルコ・マタイ・ルカの三つの共観福音書、使徒行伝、パウロ書簡がもっとも重要であるというのが、基本的な考え方としてあったのではないかと思います。さらにこれらに加え、「イエスとは何者であったのか」という問いに答える文書として、『ヨハネ福音書』と『ヨハネ黙示録』が必要不可欠なものとして要請されたのでは、と思います。すなわち、『ヨハネ福音書』において、キリストが神の言葉として世界の「始まり」から存在していたことが論じられ、また『ヨハネ黙示録』では、キリストが世界の「終わり」に再び来臨することが述べられています。イエス・キリストが単なる預言者の一人ではなく、世界の「始まり」と「終わり」を統べる特別な存在であるということは、キリスト教の教義の成立にとってきわめて中核的な要素でした。

新約聖書の正典成立の経緯については、田川建三氏の『書物としての新約聖書』(勁草書房)に詳しく説明されています。ここで述べられていることですが、最初にマルキオン派という宗派が、ルカ福音書とパウロ書簡を中心に、キリスト教の正典を確立しようとしました。エイレナイオスを含む初期教父たちは、この動きに対抗して、正典選別の作業に着手しています。ちなみにエイレナイオスは、『ヨハネ黙示録』の内容を問題視したためか、この文書を正典として扱っていませんが、田川氏はこれについて、「教会が終末論を正しいドグマの一つとして固執する限り、その正典には終末論を中心とした文書を入れざるをえないから、その意味で、いずれ黙示録は新約聖書のなかに採用されることになる」(同書145頁)と述べています。『ヨハネ黙示録』の内容は、多くのキリスト教神学者に問題視されたが、教義のなかから終末論自体を排除することはできなかった(共観福音書もパウロ書簡も、「終末は近い」という記述で溢れているため)。ゆえに、終末のあり方を鮮明に表す文書として、『ヨハネ黙示録』を正典のなかに残さざるをえなかった、ということになるでしょうか。

>これでは、発生の仕方として同等の位置にあった他の福音書が、うかばれない気がします。
>そして、結局は他はみな異端とされてしまう。いささか乱暴すぎないか?…という疑念は常に残ります。
>ただし、作成年代でいうと、4つの福音書が他に比べて先に書かれていたようだ…ということくらいは言えますか?

現在の聖書学では、4つの正典福音書は紀元後一世紀末頃までには成立していたと考えられており、それに対して、『トマス福音書』やその他のグノーシス主義の福音書は、成立年代が二世紀半ば以降と想定されていますので、全般的に正典福音書の方が古いですね。「異端」の福音書は、正典福音書をベースとした「二次創作」と考えて、それほど間違いでないと思います。

お会いした際にお話ししたことですが、歴史的に見れば、「終末論」という発想は、ゾロアスター教における「光と闇の戦争」という観念にその端緒が存在し、その後に、ユダヤ教やキリスト教の黙示文学、グノーシス主義、マニ教等に継承されていったものと考えられます。特に『ヨハネ黙示録』のインパクトはやはり強烈で、確かにオウム真理教は、この文書の影響を強く被っていると見ることができます。

とはいえ私は、オウムにとって『ヨハネ黙示録』が決定的な要因であった、「こうなることは、むしろ計画されていたのではないだろうか・・・もしかしたら。2000年ほど前に」とは考えません。むしろ決定的な要因を形成したのは、近代において人類が、自らの力で地球を壊滅させることのできるような強力な兵器を手にしたことではないでしょうか。このような事態において、『ヨハネ黙示録』という古代の文書が、これまでにない特殊なリアリティを帯びるようになってしまった。そしてオウム真理教は、小規模な教団であっても、実は大量破壊兵器を手にすることが可能であるということに気づいてしまった。「その気になれば自らの手でハルマゲドンを引き起こせる」という発想が現実的なものとなったというのが、オウムにとって本質的なことだったのだと思います。その意味においてオウム事件は、やはり近代に属する問題ではないかというのが、私の考えです。

http://gnosticthinking.nobody.jp/

 
 
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